兵庫丹波 水山 雪深し
 
【行った人】  たぬき夫婦 
【行った日】  2000年3月12日(日)
【行   程】   上新庄林道終点(9:45)〜水山山頂(11:00)〜昼食(11:45)〜
        水山の十九山鞍部(12:45)〜達身寺(14:40)

【2.5万図】   黒井、大名草(おなざ)

 朝起きると、昨日の雨がまだ降っている。
向山の上半分は雪化粧。天気予報では回復するとのことなので、それを信じて水山行
きを決行する。
 
 水山(みずやま)は、氷上町北地区、西地区の境に位置する。標高730mと五台
山(654.6m)より高いにもかかわらず、地図に山名すら載っていない。
ちょうど加古川を挟んで五台山と向かい合った位置にある。
 五台山の麓で育った私は、毎朝この水山を見ながら登校した。
母が「十九山」と言っていたので私もそう呼んでいたが、十九山は水山の一つ西の
ピークであることを慶佐次氏の「兵庫丹波の山」で知る。
また、勤務先の窓から、水山の双耳峰がよく見え、いつか水山へ、という思いが日増
しに強くなっていた。

 島田さんがMTBで来られるということを聞き、同じ日に行くことにする。
コースは上新庄から登り、カヤマチ山まで縦走という計画である。

 清住の達身寺の近くで、JL3IXW島田さんからコール。
ゆめタウンの近くまで来られたようだ。
島田さんは、Mさん、Oさんと3人連れ。
カヤマチ山(748.3m)から水山をMTBで縦走される予定である。
うまくいけば、どこかで会えるはずである。
 JA丹波ひかみ葛野(かどの)支店の前で待つ。しばらくしてMさんの車があらわ
れる。Oさんとは初対面の挨拶を交わし、島田さんらと別れる。

 母たぬきの車で上新庄の林道を行く。
途中に数体の石仏があったので、車を止めて写真を撮ろうとすると、ピピピの警告音。
なんと、カメラは電池切れ。これからの山行を暗示しているようだ。

 石碑のある二股を右にとり、林道入り口から1300Mの地点に車を置く。その先
も林道が続いているが、通行止めである。
 ここからコンクリート舗装の林道を10分ほど歩くと山道となる。
しばらく歩くとその道も植林の中に消えてしまい、いつものように急な斜面を這い上がる。
とにかく上に行けば、いつかは尾根にたどり着くだろう。
この辺りに寺跡があるらしいが、見つけることはできなかった。

 急な植林帯のなかを歩くと、昨日降った重い雪が容赦なく落ちてくる。
父たぬきがそのたびに奇声を上げている。
 およそ45分で尾根に出る。
雨が上がったばかりで、山々にガスがかかり展望はあまりない。
高見城山も霞んでいる。
安全山がすぐ近くに見えるが、ここから行くとなるとかなり時間がかかりそうだ。

 黄色い上新庄共有林のプラ杭に沿って水山を目指す。
雪がだんだん深くなる。枝からは水に近い雪が絶え間なく落ちてくる。
濡れたぬきとなって、手足も冷えてくる。
 雪がなければ快適な尾根だろう。プラ杭とともに幸世村直営地の標柱。 

 島田さんからコールがある。
今、葛野峠とのこと。すばらしい林道とヒキガエルの大群を見られたとのこと。
 しばらく歩くと、水山頂上への急な斜面だ。
雪のないところを選んで歩くが、枯れた笹や解け始めた雪でとても滑りやすい。
先日の譲葉山以上の急登である。

 11:00、到着。
標示も何もない、あるのは雪だけ。もちろん展望もなし。
 再び北西に尾根をたどり、カヤマチ山を目指す。
樹からしたたる雪の滴が陽光をうけ、ダイヤモンドのように輝く。春の輝きか。
千が峰からCQが出ているので応答する。

 さあ、先を急ごう。
ここからどう進むのか、地図を見ようとすると父たぬきが落とした模様。
どこで落としたのかなあ。
しょうがない。もう一つ持ってきているので、それを見ることにしよう。
しかし、これも濡れている。まあ、ないよりいいか。

 水山は双耳峰だが、北峰を下った所でルートを西にとる。少し進んだが、
誤りに気づき元の尾根道に戻る。
しばらく行くと青垣町との町界に出た。ここで、お昼ごはん。
濡れているので体が冷えてくる。その上、北西からの強い風。
手の先もしびれている。韓国の辛ラーメンが体を温めてくれた。
 今頃島田さんたちはどの辺を彷徨っているのかなあ。
MTBがお荷物にならなければいいが。 

 手足は冷たいが、動けばなんとかあたたまりそうである。
昼食もそこそこに先を急ぐ。
 十九山(677m)との鞍部に下る途中、青垣町側が切り開かれ、北側に展望が
開ける。粟鹿峰、東床尾山、三岳山、大江山などの山々が白く美しい。
北斜面には、雪が多い。ストックをさしてみると、多いところで50cm 近くある。
2月半ばからよく降ったものねえ。

 十九山、柱谷、そしてカヤマチ山ははるかむこう。
ここで、進路変更。鞍部から下ることにする。
その旨を島田さんに無線で伝える。ちょうどお昼休憩とのこと。
「遭難寸前。これが今生の別れかもしれない。」 のことば。
どこか下りるところを見つけて下りるつもりらしい。

 杉の植林の間を下りかける。しかし、この下りがすごい斜度。
植林の中の土は崩れやすい。濡れているので滑る。幾度となくしりもちをつきながら
急斜面を慎重に下りる。
谷まで下りると踏み跡らしきもの。徐々に明確になり、林道方土線にとびでた。
やれやれ、これで安心。
周りを見渡すと大きな杉の林。花粉が多いだろうなあ。
しばらく歩くと、カヤマチ山方面への林道に合流した。
路面にはMTBの跡。

 林道から農道に出ると、春の陽ざしが暖かい。
オオイヌノフグリの小さな花が風に揺れている。
達身寺駐車場に置いた父たぬきの車で、上新庄林道の母たぬきの車まで行く。

 そろそろ、島田さん一行も帰っているのでは、と再び達身寺駐車場へ。
そのとき、島田さんからコール。なんと今、水山とのこと。
下りずにそのまま水山へ進み、我々の足跡を辿っておられるのだ。
その上、いいものを拾ったというのである。

 ご一行の下山まではまだ時間がかかりそうなので、一旦、帰宅することにする。
濡れたものを着替え、再度達身寺へ。Mさんの車だけがさびしそうに待っている。

 上新庄の西小学校へまわってみる。下山の気配なし。
もう一度、達身寺へ。少し高いところから道路を見つめる。
西小へ行ってみようか。午後5時頃、3台のMTBが元気に走ってくる。
島田さんらしき人がこちらに手を振る。
「よかった、無事に下りられて・・。」 なんとなく、ジーンとする。
同じ所を歩いているだけに、withMTBがどんなに大変なことかよくわかるからだ。
水山を眺めながら、今日の話で盛り上がる。
それから、落とした地図も無事帰ってきた。ありがとう。
 
 Oさんは、弘浪山に興味を示されたようで、登山口などをメモされていた。
3人はMTBに再びまたがり、達身寺を目指して元気よくペダルを踏んでいかれた。
太陽はまさに竜ヶ岳に沈もうとしていた。

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  ほんまにしんどかったです。
 譲葉山の比ではありません。雪がなければ楽だったでしょうが。
 今日の経験があれば、どんな山も行けそうです。
 雪がないときにカヤマチ山へ行きます。