晩秋の八ヶ峰 知井坂から五波峠へ
福井県名田庄村

五波峠からの下りで八ヶ峰を仰ぐ

 前日天気予報を見ると、全国的に晴れとのこと。若狭の山も雨が降らないようなので、八ヶ峰へ
行くことにする。コースをいろいろ考えてみるが、知井坂を歩きたいので、かねちゃんのように五波
峠に自転車を置いておくことにする。

 堂本から五波峠へ向かう。染ヶ谷の家族旅行村は人気がなく、ひっそりとしている。さらに車を走
らせ五波峠への道を登っていく。
朝の五波峠 堂本の登山口

 五波峠にはまだ1台も車がない。霧が幻想的な雰囲気を演出している。木々の間からまだ
若い太陽が顔を出し、光の帯を作る。車から降りると身震いするほど寒い。
 2台の自転車を近くの木につないで堂本へ戻る。

 石碑のところから標識に従って登り始める。道は最初からとても広く歩きやすい。
知井坂の道 巡視路コースとの出会い

 リヤカーでも(古いかな?)通れそうな広い道は昔の往来の多さを物語る。右の谷は霧ですっ
ぽり埋まり、対面の山々が朝日を受けて黄葉がまぶしい。

 尾根にジグザグについた道は同じ勾配で続く。小さなピークは山腹を巻いている。陽が真横
から射しこんで何とも清々しい光景。
 登り始めは寒かったが、徐々に温もりじんわりと汗も出てきた。P350の西の山腹を巻いた道
はやがて尾根と合流し、しばらく歩くと巡視路コースと合流する。
巡視路コース出会い付近の黄葉
 このあたりは少し広い尾根で、アベマキやクヌギの林が広がる。
「ここいいねえ。」
振り返り、ふりかえりしながら歩く。
鉄塔からの展望 コンクリート舗装の道を歩く

 少し歩くと、鉄塔に出る。まだ建設途中なのか、荷揚げ用にネットや資材が置いてある。展
望が開け、霧が上がった黄葉の山々が明るい。北には日本海が見え、小さな島が浮かんで
いる。
「若狭の山へ来て、こんなに展望がいいのは初めて。」とうれしそうな父たぬき。これまでは
いつも雨かガスやったもんね。

 エネルギーを補給し、再び歩き出す。ふと足下に目をやると、大きなタイヤの跡。マウンテン
バイクではないようだ。こんなところをオフロードバイクが走ったのだろうか。

 少し歩くと、鉄塔556。大黒部幹線と書いてある。しばらく歩くと、突然舗装路に出る。
「えー、何これ?」
地図の破線の道は林道になり、小松谷と染ヶ谷を繋いでいるようである。小松谷方面は通行
止めの看板が立っている。  
 登山道は林道とクロスし、そこからはコンクリートの道となる。しばらく広い道を歩くと、平坦な
ところに出る。森林レクリエーションゾーンとある。朽ちた小屋のところから道は左右に分かれ、
左は八ヶ峰山頂へ、右は知井坂への道。右の道をとり、知井坂へ向かう。

 ここからも新しい轍があり、ずっと続いている。一部は新たに整備されたところもあるが、だい
たいは知井坂をそのまま走っている。そういうところは、タイヤが泥にめり込んでいる。明治か
ら大正にかけては軍隊がこの道を使い、そのために坂の両側の住民によって大改修が行われ
たそうだ。
 
錦秋の道

 タイヤの跡のある道はちょっと興ざめだが、周りの黄葉はすばらしい。ブナミズナラなどの木
の下に紅葉。展望の開けたところでは、飯盛山が尖って見える。
 山腹を、知井坂へ緩やかに登っていく。
手水鉢 左は美山町へ下る

 稜線が近づいて来た頃、四角い手水鉢があり、きれいな水が流れている。手水鉢には
「舩願主 小濱名田庄志中 樋 願主 八原 喜右衛門 世話人 山 田 忠治郎 享和
二年戌六月」と刻ま れており、小浜・名田庄・知 見八原の有志によって設置されたも の
であるらしい。稜線近くにありながら水が枯れることなく流れ、ここを旅する人たちにとっ
ては安らぎの場所であっただろう。

 火の用心の標識からは轍もなくなり、ほんの数分でよく掘れた知井坂に着く。石仏があ
ったはず、と捜すが見つからない。あとで八原側の稜線上にあるとか。

 
八ヶ峰へひとのぼり 山頂

 知井坂から少し戻り、いよいよ若丹国境を歩く。広くきもちのいい道に足も自ずと速まる。
鉄塔からは双耳峰の青葉山が見える。山頂からの展望が楽しみだ。左の東斜面は自然
林でいい感じ。

 階段の急登をひと登りで八ヶ峰山頂(800m 二等三角点)。ほぼ360度の展望で空腹
も忘れて景色に見とれる。山頂では先着の二つのグループと単独男性二人がのんびりと
休んでいる。人気の山なんやね。

 
東の展望
 東には若丹国境の先に、百里ヶ岳が頭を出している。西には頭巾山と青葉山。
頭巾山(中央)
南西には微かに北摂の深山が望める
 場所を変えて西南を見ると、多紀アルプスの三嶽、小金が確認できる。丹波の山が
見えるとうれしいものだ。目をこらすと微かになだらかな深山がいちばん奧に見える。
 
 風のこないところでお湯を沸かし、お昼にする。続々と五波峠方面から登山者が到
着。三角点に座ってお昼にしているグループがあるので、ちょっと空けてもらって写真
を写す。

 山頂で憩うこと1時間。そろそろ五波峠へ向けて出発しよう。
染ヶ谷への分岐付近の黄葉

 若丹尾根は山頂から南下し、次のピークで東へ向く。染ヶ谷への分岐の手前の少し平
らなところに山頂で出会った男性が休んでいる。名田庄村の方で、年に数回ここへ来ら
れるそうだ。来年3月には名田庄村の名が消えるので、今日は名田庄村として最後の山
歩きになるので、ひとしお思い入れがあるようだ。木の根元でゆっくりとお茶を飲みながら
木々を眺めている。しばらく話をして別れる。

 その下にもおなじような雰囲気のところがあり、「いいなあ。」と言いながら歩く。
 そこからすぐのところに染ヶ谷への標識が立っている。このあたりもいいなあ。のんびり
とこのあたりを散策するのもよさそうだ。しかし、今日は峠に置いた自転車が気になる。
若丹国境をゆく

 稜線は、北側の福井側は植林、南側の京都側は自然林で、階段もある道なので歩行
も捗る。いくつかピークを越え、708ピークへの少し急な登りを歩く。登りきるとブナの木
のいい道。
 
五波峠で待っていた自転車 五波峠から堂本へ下る

 八ヶ峰から1時間ちょっとで五波峠に着く。朝は静かな峠もたくさんの車が主を待ってい
る。自転車は?と捜せば、朝と同じ状態でちゃんと待っていてくれた。

 父たぬきは軽いクロスバイク、私は折りたたみ自転車で峠から堂本へ下る。峠から少し
下ったところで八ヶ峰を眺め、一気に下っていく。スピードが出すぎないようにブレーキをか
けながらおりる。
 染ヶ谷の家族旅行村を過ぎると、堂本までは近い。歩くと2時間以上かかるが、自転車
なら30分ほどで車に戻ることができた。

 晩秋の八ヶ峰を満喫した一日だった。 

行った日 05 11/23(水
行った人 たぬき二人
山行タイム 堂本(石碑)8:30〜巡視路コース合流9:20〜林道合流9:55〜
10:00〜知井坂10:40ー10:45〜山頂11:00〜12:00〜
染ヶ谷コース分岐12:25〜五波峠13:10ー13:20・・・自転車
・・・堂本13:50
2.5万図 久坂     山行地図


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