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若狭から京都へぬける峠がいくつかある。若狭越と呼ばれ、昔はたくさんの往来があったと聞く。
棚野坂もその一つである。地形図には載っていないが、よく歩かれた道で途中にはお地蔵さんも
あるらしい。福井、京都府県境には、オバタケダンというおもしろい名前の山もあり、以前から行って
みたいと思っていた。
やまごさんからそのコースを歩いてみないか、というお誘いがあり、同行することとなる。しかし、
福井嶺南は雨の予報。やまごさんは少しくらいの雨なら歩くというので、集合場所の口坂本公民館
へ向かう。
舞若道、大飯高浜ICをおり、県道16号線を名田庄村に向けて走る。石山トンネルを抜けると名田
庄村。16号線が国道162号線に出会うところに公民館がある。家から1時間半、集合時刻の1時
間前に着いてしまった。ずいぶん早く来られるようになったものだ。
雨脚が強くなり、「これでは登れないね。」と、登れなかったときのことを考えていると、やまごさん
到着。雨も少し小降りになったので、予定通り登ることとなる。
やまごさんの車を堀越トンネルの美山側に置き、口坂本の公民館から歩き始める。雨具をつけ、
私は傘をさして歩く。ストック2本がお荷物になり歩きにくい。持ってきたものは仕方ないので、傘を
持った方のストックはぶらぶらさせ、ときどきデジカメで撮影というスタイル。何とも妙な格好である。
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橋を渡ると登山口 |
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いい道 |
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坂尻の橋を渡り、棚野坂の登山口から歩く。小浜山の会の道標があるので、それが目印となる。
登り口に祠があり、小さな板碑型の石仏が数体安置してある。その前には猪か熊の檻もあり、動物
による農作物荒らし防止に設置してあるようである。そういえば、16号線は「美林街道」と名付けら
れており、沿道の杉には熊はぎ防止のPPロープが巻いてある木がたくさんあった。
雨が少し強くなる。デジカメを濡らさないようにしないと・・・。やまごさんは200万画素の防水デジ
カメを持ってきている。
地形図を見ると、尾根までは等高線が混んでいる。少し急だがつづらおれの歩きやすい道。深く掘
れた道や広い道が往時を偲ばせる。傘をさして歩いても枝に引っかかることもなく快適。
山腹を巻いた道は傘をさしていても十分歩けるほどの広さ。枝の張り出しもあまりない。
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崩落地 |
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棚野坂に復帰 |
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道はP439の東斜面を巻いて少しずつ高度を上げていく。突如目の前が明るくなったかと思うと
斜面が崩落している。昨年の台風で崩れたのだろうか。
「道がないよ。」
「とにかく尾根はすぐ上やから、尾根まで登ろう。そのうち棚野坂に合流するはず。」
と藪をこいで尾根にあがる。雨が強く降り、尾根道はとても暗い。この尾根道もなかなかいい雰囲
気。
439ピークを越えて少し歩くと、標識のある棚野坂に出る。
「やれやれ」
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雨がいちばんふってた頃 |
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ガスに煙る |
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雨は強いが、ここからはいい道。ブナも出てきた。ガスに煙るブナの林もなかなかいいものだ。
幻想的な雰囲気の中を南へ歩いていく。
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よく掘れた道 |
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一面イワカガミ |
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雨が少し小降りになってきた。イワカガミが多くなり、あたり一面イワカガミだらけ。こちらの斜面、
あちらの林の中をイワカガミの葉っぱが覆い尽くしている。春にはピンクの絨毯になるにちがいな
い。トクワカソウは?と捜したが、イワカガミの葉ばかりだった。
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倒木ブナに生えた大きなきのこ |
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六地蔵さん |
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道は1本ではなく、あちこち歩きやすいところをあるいているうちに何本もできたようだ。どこを
歩いても合流する。517mを過ぎ、しばらく歩くと少し急な登りとなる。前方を行くやまごさんが
何やら立ち止まった見ている。近寄ると、倒れたブナに大きなきのこがたくさん生えている。
「何タケかな?」
食べられそうな気がするが、森のものは森の動物たちに置いておいておげよう。
きのこの生えているところからほどなく六地蔵さん。六体のお地蔵様だが、二体ずつ3ペアで
6体のように見えるが・・・。やはりここは石仏研究家にお出まし願わねば・・・。
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六地蔵さんさようなら |
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県境稜線に出る |
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時計を見ると11時半。雨もやんでいるので、ここでお昼ご飯にする。風が吹くと木からしずくが
落ちてくる。気温が下がるかと思ったが、それほど寒くない。
ここは県境稜線のCa670の少し北に位置し、道が二手に分かれている。西の道は棚野坂、東
へ行けば、西畑越である。六地蔵さんの前に看板がある。
棚野坂の六地蔵
棚野坂は鶴ヶ岡の大及と口坂本の坂尻を結ぶ高浜街道の要衝で往来盛んな鯖街道の峠で
あった。しかし、堀越峠の整備が進んだことや昭和二十八年の十三号台風による水害のあと通
る人もなく、廃道と化しついに自然に還った。六地蔵をここに残して。1994年 京都 小畑 登
とある。今はときどき登山者が通るくらいの寂しい山の中で静かにたたずむお地蔵様。でも6人だ
から寂しくないかな?
もう1枚看板がある。西畑越について書かれたもので、ここから西畑集落までぼちぼち歩いて4
時間とある。またオバタケダンまでは藪こぎとも・・。
お腹もいっぱいになり、六地蔵さんに別れを告げて、東の道を県境稜線に向けて出発する。歩き
初めてすぐのところで父たぬきが何やら見つける。黄色いものが地面に落ちている。
「?」
糸のついた風船、文字が書いてある。“九州電力”の文字が見える。九州からここまで飛んできた
んやね。
六地蔵から五分で県境稜線に出る。西畑越の標識がある。ここから東へオバタケダンめざして
歩く。
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オバタケダンへ向かう |
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大きなブナ |
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六地蔵の前の看板には藪こぎとあったが、どうしていい道である。道は尾根の北側で小さなピー
クは巻いているので、アップダウンがなく歩きやすい。やまごさんは「こちらを歩くわ。」と尾根を歩
いている。
「あれ?落としてる。」
ホームページをプリントアウトしたものを六地蔵付近で落としたらしい。
ブナが多くなり、いい雰囲気。尾根をガスが流れていく。写してみるがうまく写っていないだろう
な。
689pも北を巻いて行く。ここで南へ方向を変えるので要注意。要所要所に赤テープがあるので
それを見落とさないようにすればいいが、きちんとコンパスで方向を確認することも必要だ。
少し歩いて、次のCa670も巻き道があるが、ピークへ向かう。稜線には赤テープとトラテープが
あり赤テープは小浜山の会、トラテープは山歩仲間のものだという。概して、トラテープは尾根に
あり、赤テープは西畑越の道にある。
ピークに散歩仲間の標識があり、文字が消えかかっているが何とか判別できる。標識が示すよ
うにオバタケダン方面へ進む。
ピークを下ると、どっしりとしたブナが迎えてくれる。大人が二人で抱えても抱えきれないほどの
太さ。しばらくブナに見とれる。
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黄葉の道 |
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オバタケダン山頂はガスの中 |
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ブナからは細い雑木の林の道を歩く。ここもいい雰囲気。色づき始め、あたりが何となく明るい。
「ここもええ雰囲気やねえ。」
笹が多くなる。少し急な登りに足を滑らせながら登りきるとオバタケダン直下。ここにも山歩仲間
の標識がある。県境を北へ歩けば知井坂、八ヶ峰。知井坂まで歩いてみたいね。
短い急登を登って飛び出たところがオバタケダン729m(三等三角点)山頂。京都側が桧の幼
木で展望がいいのだろうが、ガスっていて全く展望がない。ときおりガスが薄くなって近くの山の
輪郭が見え隠れするくらいだ。
西畑へは、山頂から東へ歩くようだ。オバタケダンとはおもしろい名前だが、美山町側に大畠谷
という谷があり、これがなまってオバタケダンとなったのではないだろうか?やまごさんはおばさん
だけが登れる山だと笑っている。
オバタケダンは里からは見えにくい山ではないかと思う。訪れる人も少ないだろう。帰宅して検
索すると、扇ノ山に登ったとき、オバタケダンの隠れ里さんと無線で交信している。そのときはこの
山のことは全く知らなかったが、こうして来てみるとずいぶん山深いところまで来たなという気がす
る。
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帰りにもう一度ブナを見あげる |
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棚野坂 |
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ガスのはれないオバタケダンをあとに、来た道を引き返す。頂上直下は滑りやすいので要注意。
同じ道を歩いていても往路と復路は景色がちがうように思える。
大きなブナの前で立ち止まり、もういちど振り仰ぐ。「ほんまに大きいなあ。」
六地蔵への分岐で、地図を捜しに六地蔵方面へ廻るやまごさんとわかれ、我々はCa670に登
る。ここにはアンテナのある施設があり、西から広い道があがってきている。電柱もあり、軽自動
車なら走れるほどの広さだ。下った鞍部に六地蔵からの道が合流し、そこでやまごさんを待つ。
ここには、棚野坂、という標識が立ち、若丹境の峠である。
しばらくすると鈴の音がして、やまごさん登場。
「地図あった?」
「あった、ほら。あれ??」
やまごさんは、ポケットに入れたつもりだったが、それは単なる雨具の裏地で、また地図は抜け落
ちていた。
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旧堀越峠 |
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色づく |
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広い道は西の電波塔へ続いているようだ。棚野坂からほんの少し歩いたところに赤テープがあり
雑木の中へ導いている。ここが古い堀越峠で、ここから下っていく。
入り口はわかりにくいが、少し歩くといい道が続く。尾根をジグザグに横切っているので深く掘れ
ている。 |
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深く掘れた道 |
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植林の中を下る |
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美山側も道が何本もあり、昔は往来が多かったことを物語っている。落ち葉の道は足にも優しい。
やがて雑木から植林の道になり、順調に下りていく。
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電波塔への道へ出る |
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再び峠道を歩く |
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峠から25分ほどで車道(未舗装)に飛び出る。意外と速かったね。小休止の後、下りたところの真
向かいの赤テープから再び峠道を歩いて下る。
植林の中でも峠道はよく残り、つづら折れに下っていく。 |
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堀越トンネルに下りる |
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県境稜線からおよそ50分で堀越トンネルの真上に出る。ここで道はとぎれ、めいめい好きなところを
下りるとトンネル出口に出た。ここにも檻が設置してある。
やまごさんの車はトンネル出口からすぐのところ。坂本の公民館にもどる頃には薄日がさすほどに天
気は回復。棚野坂の山々は秋の陽に照らされていた。
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