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一の森からのぞむ ジロウギュウと剣山 |
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剣山へ行ったのはずいぶん前のことだ。11月の初旬、剣神社簡易宿泊所に泊めてもらい、見ノ越
から、山頂へ歩いて登った。下りはロープーウエイを使ったと記憶している。2000mに近い山頂は
寒く、太平洋が光っていたのが印象的だった。
何年ぶりかで訪ねた剣山は花の多い素敵な山だった。
朝、4時過ぎ、白み始めた空を眺めながら舞鶴若狭自動車道に乗る。高速を乗り継ぎ、明石海峡
大橋、大鳴門橋と二つの吊り橋を渡って四国に入る。高松道、徳島道を走って、貞光へ。
貞光からは国道438号線を南へ走る。貞光川に沿った渓谷は文字通りのV字谷で、細い道が谷
沿いに続く。新しくつけられたトンネルや道もあり、以前よりは走りやすいものの、集落内は対向でき
ないほどのところも多い。父たぬきは細い道の運転になぜか口数が多くなり、対向車が来るたびに
何か叫んでいる。
葛籠堂を過ぎると、ヘヤピンカーブとなり、ぐんぐん高度を上げる。200m毎に標識があり1200m
まで上がってきた。
剣山スキー場を通り、ラフォーレ剣山を過ぎると、丸笹山と塔の丸の鞍部。正面に剣山とジロウギ
ュウが姿を現した。
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満開の石楠花に見送られ・・・ |
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ツルギミツバツツジ越しに仰ぐ山頂 |
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道を下ると見ノ越到着。以前とあまり変わらないたたずまいだ。リフト横の駐車場に停め、支度
をして剣神社の登山口に向かう。しかし、リフトが9時から動くというので、始発まで少し待っても
歩いて上がるよりは速いだろうと、リフト乗り場に戻る。20分ほど待ち、リフトで西島まで向かう。
カッコウがのどかに歌っている。ツツドリの声も聞こえ、終わると、ホトトギスも啼き始めた。
リフト沿いにはシャクナゲが満開。植えられたものだろうが、心が浮き立つ。リフトの下には囲い
の中に「キレンゲショウマ」と書かれた植物が・・。これがキレンゲショウマか、よく覚えておこう。
約15分で西島駅に到着。北には、丸笹山、塔の丸のなだらかな姿。西には、特徴のある三嶺。
そういえば、何年か前のGWに登ったことがあったっけ。初めてお会いする無線のお仲間にお世
話になり、落合峠でテント泊したね。その時のことを懐かしく話しながら、先ずは刀掛けの松へ。
満開のツルギミツバツツジのピンクが鮮やかだ。山頂のヒュッテはすぐそこに見える。リフト乗り
場でヒュッテのご主人を見たが、同じ頃に上がられたようだ。
道沿いには、小さな白い花。ミヤマハコベ、ワチガイソウ、コミヤマカタバミがかわいい花を咲か
せている。
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刀掛けの松の分岐 |
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刀掛けの松で、道は3方向に分かれる。お地蔵様もあるが、文字は摩耗して判読できない。
先ずは、東の行場へ向かう。しばらく歩くと二手に分かれ、左の道を進む。ガレた道を少し下る
と、ロープが張られている。「キレンゲショウマ」という文字が飛び込んできた。リフト下にあった
葉っぱと同じものがそこにある。ガレた斜面に緑の葉が瑞々しい。梅雨が明ける頃、あの黄色
い花が咲くのだろう。宮尾登美子さんの「天涯の花」を読んで以来、ずっとあこがれていた花。
まだ見ぬその黄色い花に出会えることを楽しみにし、それまで心ない人に荒らされることのな
いことを祈りながらその場を去る。
付近には、よく似た葉がたくさん出ている。トリカブトの葉に似ているが、これはシコクブシな
のだろうか。秋になって花が咲くとよくわかるのだが・・・。
紫色のマムシグサ、と思ったら、イシヅチテンナンショウ。花が多い道で飽きない。 |
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キレンゲショウマ自生地 |
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「あれ?」よく見ると、ヤマシャクヤクの蕾。今年は出会えないかと思っていたが、こんなところ
で出会えるなんてうれしいね。少し歩くと、開花した株もある。 |
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古剣神社 |
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古剣神社、両剣神社付近は大きな岩があり、行場という雰囲気が漂う。水の流れる急な沢を過
ぎるとなだらかな道となる。 |
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お花畑周辺 |
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コミヤマカタバミ |
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ここまでは急な斜面をへつった道だったが、少し平坦なところに出る。濃い緑のバイケイソウ。見
回すと付近にはたくさんのヤマシャクヤクが咲いている。あっちにもこっちにも・・・。テンニンソウの
葉も多い。ヤブレガサのような葉、サンカヨウのようにも見える葉っぱなど柔らかな若葉が風に揺れ
る。
このあたりはお花畑と呼ばれているところ。春から秋にかけて、いろいろな花が楽しめそうだ。
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殉難碑 |
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一の森ヒュッテを下に見ながら三角点へ |
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コヨウラクツツジが咲き、笹が多くなると、剣山から一の森への縦走路も近い。緩やかに登り返
し、殉職碑の建つ鞍部に出る。1966年雪崩で遭難した剣山測候所員、大谷好徳氏の殉難への
新田次郎氏のことばが刻まれている。「天涯の花」にも測候所員の殉職の場面が出てくるが、そ
のモデルとなったものだろう。
ここから一の森はすぐそこ。山頂へのよく掘れた急な道を登りきると、最高点。そして、五葉松
の幼木のある道を歩いていくと三等三角点がちょこんと顔を出している。その少し先でおにぎりを
食べて小休止。西に、剣山、ジロウギュウが大きく横たわる。ぐるーっと360度の展望。霞んでい
るのが惜しいが、雨が降らないだけでもよしとしなければ・・・。笹の中に一本の道。あの道を行け
ば、どこに行けるのだろう。
いつまで見ていても飽きないが、今日はここが最終目的地ではない。一の森ヒュッテでお茶で
も、と思ったが先を考えるとゆっくりもできない。来た道を引き返し、剣山に向かう。
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一の森から二の森へ向かう |
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シコクシラベの森を歩く |
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鞍部から二の森へ登り返す。笹から樹林になり、様々な説明板がある。この付近はシコクシラベ
という針葉樹の保護林で、遺伝資源を自然生態系内に保存することを目的としたものらしい。
コヨウラクツツジ、ツルアジサイ、アカカンバなどの木々もあり、少しガレた登りも全く気にならない。
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アカカンバの道 |
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もうすぐ山頂 |
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二の森には、二の森神社の小さな祠があり、手を合わせて通り過ぎる。二の森神社があるという
ことは・・・、と地図を見ると一の森にもあったのだ。それを見るのを忘れている。アカカンバの林を抜
けると、笹の尾根に山頂に続く道。大勢の人影が見える。
木の階段を登ると木の板のしかれた山頂。10人ほどの人たちが北の方に向かって般若心経を一
心に唱えている。その後ろをそーっと通らせてもらい、木道を三角点へ向かう。山頂は広く、平家が
馬を走らせたという言い伝えがあるほど。山頂の南端に三角点はある。
以前は三角点のそばの石組みに腰掛けられたが、今は近づけないようになっている。木道が取り
巻くように付けられたいるのだ。植生を守るためのものだが、なるほどこれまで道だったところは何
も生えていない。
木のベンチもあり、そこでお弁当を広げるグループ、三角点のそばで記念撮影をする人たち。おも
いおもいに憩っている。リフト上がってこられるので軽装の人が多い。
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山頂の木道 |
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山頂からジロウギュウをのぞむ |
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剣山頂から一の森方面の展望 |
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展望は360度の大パノラマ。条件がよければ大山も見えるそうだが、今日は靄っているの
で遠望はきかない。以前来たときには、石鎚や光る太平洋が見えたが・・・。
いだけよしとしよう。
それでも剣山系の山々はそろって顔を見せ、これから向かうジロウギュウも美しい姿を見せ
ている。東には先ほど歩いてきた一の森とそれに連なる山々。北には塔の丸、丸笹山。
「四国の山はええなあ。」
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ジロウギュウへの登りから剣山 |
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観光登山の女性がジロウギュウの方を指さして何か話している。
「あっ、こっちに向かっている。」
「ここを行くのは危険・・・。」
その横をすり抜け、ガレた急な道を下り、ジロウギュウに向かう。標高差150mほどを下り、
ジロウギュウへ登り返す。ツルギミツバツツジ、コメツツジが登山道を飾る。コメツツジの開花
はこれからだが、気の早い蕾が開こうとしている。ツツジは開きかけて寒波にでも出会ったの
だろうか、花が傷んでいる。
ジロウギュウ直下の登りは、剣山の方から見ると急なので、覚悟していたがそれほどでもな
く、交互に足を動かせばいつのまにか山頂だった。
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ジロウギュウから三嶺への縦走路をのぞむ |
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山頂にはプレートがあるだけで三角点はない。少し南の広いところで数人のグループが
食事中。我々もここで昼食にする。しかし、羽アリのような虫が団体でやって来ては体や
顔に突進してくる。虫除けスプレーを振り、少し攻撃が和らいだ。やれやれ。
ここも大展望。三嶺の秀麗な姿がさらに大きくなり、縦走路が一望の下に。午前中よりも
霞がひどくなり、落合峠や矢筈山が何とか確認できるくらいだ。
無線で三室山に登山中のBHNさんをコールすると、タイミングよく繋がる。お互いの状況
を話し、下山にかかる。
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ジロウギュウの山腹を剣山へ向かう |
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下山は、ジロウギュウの西斜面の道を降り、ジロウギュウ峠へのトラバース道を歩く。下り
始めたとき、OAPさんの声が無線機から聞こえる。高松の局長さんと交信中だったので、ブ
レイクを入れお話しする。那岐山で食事中とのこと、あちらも暑いそうだ。
ジロウギュウ峠には、三嶺まで14000mとある。いつか縦走を、と想いつつまだ果たせて
いない。
剣山に登り返そうか、大剣神社への道をとるか少し迷ったが、まだ歩いていない道、という
ことで、大剣神社へ向かう。トラバース気味の道。ここからのジロウギュウの姿がいい。眼下
には、萌葱色の谷。秋の黄葉の頃に来てみたいね。
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大剣神社が見えてきた |
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こういう斜面にはヤマシャクがあるかも、と捜しながら歩くと、やはりあった。一つ見つかると
あっちにもこっちにも蕾や花がある。
小さな谷で大きなカメラをかまえる男性が二人。と軽やかなさえずりが聞こえる。
「何ですか?」
「オオルリとコマドリです。」
ちょうどそのときまたさえずりが・・。
剣山は、花を見る人も鳥を観察する人もやってくるんやね。
大剣神社の赤い屋根が見えてきた。大剣岩の姿をみて、昔の人は「石立山」「立石山」と呼
んだのだろう。
大剣神社の直下に、日本名水百選のご神水がわき出ている。これを目当てにやってくる人
も多く、何人かの人に道を尋ねられる。
大剣神社に詣で、西島駅に向かう。
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大剣神社から西島駅へ向かう |
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西島駅 |
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15分ほど歩くとリフト乗り場に出る。歩いて下りる人もリフトで下る人もここで休憩。我々も笹団子
を買って休憩。
往復のリフト券をザックから出し、リフトに乗る。
「いつも道のない藪山が多いので、たまにはこんな楽をしても・・。」と父たぬき。
見ノ越には朝よりもたくさんの車が停まっている。
「さーて、丹波へ帰ろか。」
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手打ちうどんのお店 |
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渓谷を彩る |
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見ノ越から貞光への途中、手打ちうどんの看板が目に留まる。往きも気になっていたお店。煙突
が二本立ち、煙が出ている。
店には若いご夫婦連れ。ご主人はこの地の生まれだが、奥さんは京都生まれという。でも、この
山深い地がとても気に入っている様子。あれこれ話が弾む。なぜか印象に残るお店だった。
貞光川沿いにたくさんのこいのぼり。うどんやさんに尋ねると、子どもの数はとても少ないそうだ。
家々のかどにこいのぼりが泳ぐ日がいつか来るといいね。
剣山、すばらしい山だった。
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※剣山の花々はこちらをご覧ください。 |
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