ブナと大展望に酔う 比婆山
広島県比婆郡

県民の森から御陵を望む


 10月に入って天気のよい日が続いている。空気が乾燥しているので、山の上からの展望がいい
だろうなあ。こんな日は、ちょっと遠出をしてみたくなる。

 朝5時少し前に家を出、徐々に明るさを増していく東の空を背に中国道を走る。
 ちょうど岡山兵庫県境の杉坂トンネルを出たとき、ラジオからラジオ体操の音楽が流れてきた。山
間を走っているので、所々で霧がたなびいている。雲海というほどでもないが、もう少し秋が深まる
と、一面霧の海となるだろう。
 
 中国道東城インターをおり、県民の森をめざす。コンビニを探したが、この道筋にはない。インター
を下りてすぐ南にあったのを思い出したが、家から持ってきた食料で足りるだろうという判断で、引き
返さず国道314号線を北へ走る。前回(2001年11月)来たときは、天気が悪く周辺の状態も全く
わからなかったが今回は道沿いの景色がよく見える。東城町の町並みを抜けると、正面に形のいい
山が見えてきた。飯山といい、登山道の案内板もあった。
 
 東城インターから約45分、家を出てから4時間。県民の森に着く。駐車場は車もまばらで、1組の
中高年グループが山行き支度をされている他はとても静かだ。
 さっそく身支度をし、前回、研さん@広島にご案内いただいた出雲峠へ向かって出発する。リヤカ
ーでも十分通れるほどの広い道だ。そういえばリヤカーが数台置いてあったなぁ。キャンプ用品を借
りて積んでいくのかな?
 
広い出雲峠への道 出雲峠

 出雲峠の手前で、草の中を何やら捜しておられる方がいる。その辺をよく見ると、終わりかけのマ
ツムシソウ、かわいいウメバチソウ、センブリなどがそこかしこにある。前回は11月はじめだったの
で、花はほとんど無かったが、ここは花の園だったのだ。かわいい花々に感激しながら出雲峠に着
く。

 出雲峠はなだらかで広い。「グランドゴルフでもできそうやな。」
トラロープで仕切られている 烏帽子山頂上

 出雲峠から烏帽子山をめざす。ここからはブナの森の道。少し歩くと、トラロープで遮られた大きなブ
ナがある。根を踏まないようにするためだろうか。多くの登山者がいろいろな木の根を踏んでいく。私も
その一人だ。心の中では、ごめんね、と言いながら歩いている。ここ比婆山もブナの根元を踏まなけれ
ばならないところが多い。
 つづらおれの道を、少し黄葉し始めたブナを見上げながらゆっくり登っていく。ブナが少なくなり、低木
が多くなると烏帽子山も近い。
「確か、この辺で研さんにプヨプヨのキノコを採ってもらったなぁ。」
あの日はガスで覆われて周りの様子がよくわからなかったが、歩いた道は覚えている。
烏帽子山から吾妻山 望遠で三瓶山?

 出雲峠から1時間あまりで烏帽子山山頂に出る。平らな山頂にはベンチや山名盤がある。展望はほ
ぼ360度。北は島根県。宍道湖が見える!西の吾妻山を双眼鏡で覗いてみると、登山道をたくさんの
人が歩いている。目を少し右にやると、台形で形のいい山が目に入る。三瓶山かな?
 南には、黄葉のブナの衣を着た御陵がどっしりと座っている。反対側は毛無山。
 無線で研さんを呼んでみるが応答がない。携帯電話をかけると牛曳山とのこと。今日は所属される山
の会のみなさんとご一緒に歩かれているらしい。お元気そうで何よりだ。
 しばらく展望を楽しみ、御陵をめざす。御陵への登山道沿いはブナの純林で、まさに癒しの森だ。すば
らしいブナの森に見とれ、何度も足を止めてデジカメのシャッターを押す。
少し黄葉し始めたブナ こんなブナも

 何十年何百年の風雪に耐え未来に向かって生きようとしているブナの大木のそばにいると、心が奮い
立ち勇気がわいてくる。「若木が多い森はまだまだ大丈夫なんですよ。」と研さんに教えてもらったところ
だ。
御陵 門栂(もんとが)

 ブナの森を登り切ると御陵(1256m)の平坦な山頂に出る。御陵にはイザナミノミコトの陵墓として伝
えられる巨石が祀られ、一帯は「比婆山伝説地」として広島県の史跡に指定されているそうだ。いわれ
を読むとミステリアスで何となく異次元に迷い込んだような錯覚をおぼえる。
 近くには門栂(もんとが)と言われるイチイの古木が門のように立っている。ここに根をおろし何年も何
年も陵墓を守ってきたのだろう。

 御陵からおっぱら越に向かい下っていく。ここもブナぶなブナ・・。
 おっぱら越には池の段と立烏帽子駐車場へ案内板が立っている。ここも前回研さんにご案内いただい
たとおり池の段に向かう。
池の段から御陵を望む

 池の段への道は、この山域では狭い方だがそれでもよく歩かれた快適な道だ。ブナ林が切れ、ホツ
ツジの赤が目にとびこむと池の段山頂はすぐ。
 山頂は360度の大展望。登ってきた道を振り返ると御陵。左に吾妻山、右に毛無山を従えどっしり
と大きい。東には立烏帽子。すばらしい展望だ。
 足元を見ると、リンドウ、終わりかけのマツムシソウ。その先のピークでお昼にすることにする。あちこ
ちにリンドウがほほえんでいる。
 こちらのピークにはお地蔵様がおられる。いったい誰が何のために・・・。
 風が当たらないところでお湯を沸かしラーメンを食べながら無線をワッチする。大展望を楽しみながら
の昼食はどんなごちそうにも勝る。
池の段にはお地蔵様が・・。 鞍部から立烏帽子

 ゆっくりしたいところだが、鞍部に下り立烏帽子への木の階段を上る。立烏帽子は比婆山系の最高峰
(1299m)だが、山頂は狭く、池の段や烏帽子山ほど展望はない。それ故訪れる人も他の山に比べる
と少なく、静かで落ち着いた雰囲気だ。
 切り開きから竜王山や立烏帽子駐車場が見える。さて、次の目標は駐車場だ。
 ブナに囲まれたつづらおれの道を下りていく。北斜面なので黄葉も他より進んでいる。
立烏帽子駐車場 展望園地から望む出雲峠

 10分あまりで駐車場に下りたつ。車は予想したほど多くない。東屋で研さんと食事をしたなぁ。などとなつ
かしい思いに浸りながら、県民の森への道を歩き始める。ここもブナの森の道。展望園地で最後の展望を楽
しみ県民の森へと下る。木々は冬への準備を始めようとしていた。
 研さんはまだのようだったので、バスの運転手さんに手紙をあずけ、ブナの森に見送られて帰路についた。

比婆山で出会った花々もご覧くださいね。


行った日 03 10/4(土)
行った人 たぬき二人
山行タイム 公園センター9:15〜出雲峠9:55〜烏帽子山11:05〜
御陵11:25〜池の段12:05−12:55〜立烏帽子13:12
〜立烏帽子13:25〜公園センター14:25
参考文献 山渓登山ガイド広島県