伊佐口から五台山〜烏帽子山
兵庫 丹波

鷹取山と烏帽子山(右)

 五台山に登るにはいくつかのルートがある。いちばんポピュラーなのは香良の岩瀧寺からのルー
トだが、鴨内峠から登る人も多い。伊佐口にお住まいのTさんから、「昔から伊佐口から登る道もあ
りますよ。」とお聞きしていたので、歩いてみたいと思っていた。

 今回は香良の隣の集落、伊佐口から登り、五台山、小野寺山、鷹取山と分水界尾根を歩いて愛
宕山の手前から西に延びる尾根にある烏帽子山へ、そしてそのまま尾根を下って北油良と絹山の
間の勝坂に下りようというものである。

 車一台を大師の杜に置き、伊佐口奥の林道終点に車を進める。昨年熊出没情報のあったところ
だ。注意を呼びかけた看板らしきものが残っている。
 森林組合が仕事をされているのか、轍が新しい。堰堤の右側の道を歩いていく。少し荒れた谷沿
いを歩いていく。植林の林は間伐され枝打ちされている。ピンクのリボンに従って歩いていくと、谷か
ら離れ、リボンは植林の中の急登を示している。そのまま谷沿いの道を行ってもいいのだが、ここは
リボンに従う。
林道終点の堰堤から登り始める 植林の急登をジグザグに登っていく

 ジグザグ登っていくとすぐに尾根に出る。右へ行けば、香良円悟寺の裏山。左は五台山だ。植林
に囲まれた尾根を歩いていく。子どもの頃、五台山へ登るときにはここを歩いたはずだが、30年以
上も経つと周囲の様相は一変している。その頃は、木は植林されたばかりの幼木だったので景色
を見ながら歩いたことを覚えている。茨が多く、ズボンを引っかけながら必死で歩いた。
 今は、木が大きく育ち展望もあまりない。木の間から、右にこれから向かう烏帽子山が見え隠れし
ている。





 緩い勾配の尾根をしばらく歩くと、リボンがたくさん結んである
ところに出る。すぐそばに大きな桜の木。太い根元が三つに分か
れている。勢いよく天に手を伸ばしたその姿に何ともいえない感
動を覚える。
「Tさんはこの桜のことを言っておられたんや。」
Tさんの話にあった桜とはこの木のことだろう。
 小さい頃、下からこの桜を見ていたはずだが、全く意識もしてい
なかった。春にどんな花を咲かせるのだろうか。
 風が枝をならして去っていく。風雪に耐え生きてきた桜に勇気
をもらい再び歩き始める。






大きな山桜
 桜からしばらくは緩い登りだが、徐々に尾根は急登となる。ゆっくり歩いても汗が噴き出す。右から
の尾根と合流するところに見慣れた赤布が揺れている。小峠からの直登の尾根だ。ここからは見覚
えがある。急登を喘ぎながら登り、出たところは鴨内峠からの道がヘアピンにカーブしているところ。
1/12は「登山道未整備」という札があったが取り外されている。ピンクリボンに従えば迷うことなく
伊佐口に下りられるからだ。
尾根を歩く 左鴨内峠 右五台山

 五台山山頂にはまだ誰もおられない。いつものように、着くとすぐに氷ノ山を確認する。何とか白
い輪郭が確認できる。北には床尾山から三岳山、大江山と白い山々が続く。南には中央分水界
の山々と、今日の後半ルート、烏帽子山から勝坂への稜線。はたして烏帽子山から勝坂へ到達
できるのだろうか。

床尾山は白い 五台山から烏帽子山

 ぽかぽかと暖かい。ノートに記帳し小野寺山へ向かう。
 小野寺山には、ご夫婦連れが二組お昼ご飯の最中。京都を6時半に出てこられたという。雪が多
いのでは、とその準備もしてこられたようだが、雪がなく暖かいのでゆっくりとして帰られるとのこと。
分水界の径や丹波の山についてお話しし、無線用名刺をお渡してちゃっかりホームページの宣伝を
しておく。
小野寺山から親不知 母も植えた鷹取山斜面の檜

 小野寺山から鷹取山までは雑木の明るい道。昔は美和側に栗林があったと母が話していたが、今
も栗はなるのかな?60年以上前の話だ。
 そんなことを思いながら歩いていると、いつのまにか鷹取山の登りにかかる。急な斜面に植わって
いる木は、母も日役で植えたらしい。その木も大きく育っている。母は70歳を過ぎ、再びこの木を見
ることはないだろう。
 鷹取山でお昼にする。後かたづけをしていると、無線機から播丹界の竜ヶ岳移動TQFさんの声。今
年初めての交信かな?
伐採され明るくなった 烏帽子山への分岐
 鷹取山から美和峠へ下り、分水界の径を南へ歩く。11月に来たときより明るくなっている。木が切
られているのだ。以前愛宕山で出会った森林組合の人たちの仕事だろう。
 愛宕山の手前の烏帽子山への分岐から西に向きを変え、香良、北油良の境界尾根に入る。整備
されていないので枝が張り出したり倒木があったりするが尾根なので問題なく歩ける。地形図では
尾根に3つのピークが確認できるが、烏帽子山はいちばん西のピークである。一つ目と二つ目のピ
ーク鞍部で5,6頭の鹿が香良から北油良側へ横切っていく。突然の闖入者に慌てているだろう。
二つ目のピークを過ぎるとやせ尾根
になり少し歩くと、小広い烏帽子山に出る。木々に遮られ展望はない。烏帽子山の香良側中腹には
実家の山があり、母の山仕事に付いてよく遊びに来たものだ。冬の風が強い日、おやつのはったい
粉が風に飛んでいったっけ。

 さて、ここから絹山・北油良の破線の鞍部へ下りなければならない。方向は南西。その方向は等高
線が最もこんでいる。激下りではあるが、木を頼りに下りていく。OAPさんの声が無線機から聞こえる
が、今は応える余裕などない。方向をはずさないように下りていると、「境」というコンクリート杭を見つ
ける。植林が出てくると鞍部も近い。

 鞍部は割合広く、モミジが1本立っている。絹山、北油良側への道を捜したが、確認できなかった。
 
小広い烏帽子山 烏帽子山を下りた鞍部にたつモミジ
 鞍部から登り返し、点名北油良をめざす。赤松の匂いのする丹波らしい山だ。ピークを二つ越える
と点名北油良(349.4m)。頂上真ん中にひっそりと四等三角点が埋まっている。落ち葉に埋もれ
5cmほどしか頭を出していない。お茶と甘納豆で休憩し、最後の勝坂をめざして尾根を南西に下り
ていく。
 
北油良三角点 岩場を下りる
 傾斜はさほどないが、大小の岩が露出し、岩を巻きながら下りなければならない。慎重に下りてい
く。
 途中に、すこし展望の開けたところがあり、北油良や霧山がよく見える。足下は落松葉でふかふか
している。
切り開きから北油良と霧山(中央の山) 勝坂からの道は藪になりつつある
 三角点から30分で勝坂におり立つ。境を示すコンクリート杭が二つあるだけの暗い峠だ。絹
山側に少し藪っぽいが明らかに道だと思える踏み跡が下りている。あまり歩かれることがないのだ
ろう。しかし、藪っぽいのはほんのわずかの間で、道はすぐに杉の林に入り、鉄製の猪柵に出る。
伊佐口林道入り口の柵と同じものだ。
 
最後は植林の中を歩く 左の尾根から勝坂(鞍部)へ下りる
 柵を開けて出たところは絹山の別荘分譲地。歩いた尾根を見ながらぶらぶらと大師の杜まで戻る。
 今日は、当初の計画通り勝坂に下りることができた。下りの尾根は難しいと言われるが、地形図と
コンパスでしっかり進路と現在地を確認しながら歩くことが大切やね。


行った日 04 2/8(日)
行った人 たぬき二人
山行タイム 林道終点9:15〜尾根9:40〜桜9:50〜小峠からの尾根合流10:10
〜五台山10:20−10:45〜小野寺山10:50ー11:05〜鷹取山11:40ー
12:25〜美和峠12:35〜烏帽子山分岐12:50〜烏帽子山13:15〜
鞍部13:35〜北油良三角点13:50〜14:20勝坂〜大師の杜14:40
2.5万図 黒井