竜ヶ岳は、ふるさとひょうご50山の一つである。登り口は加美町清水からが多く、氷上町側から登
られることは少ない。
前回登ったのは氷上町三原からで清水坂を見つけられずに急な斜面を這い登った記憶がある。今
回も氷上町側からだが、東に延びる尾根から登り、鳴尾山を経由して舟坂峠へ下ろうという計画であ
る。
地形図を見ると、かなりロングコース、はたして歩き通せるだろうか。途中の鳥羽峠で下りることも
考え葛野の谷へ入る。
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内尾神社御旅所から出発 |
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長都羅志山三角点 |
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私の車を三方大池の近くに置き、父たぬきの車で中野の内尾神社の御旅所へ向かう。長都羅志山
へのとりつきをどこにしようかと迷ったが、御旅所の北西の谷から入ることにする。御旅所は以前と雰
囲気がどことなく変わっている。周りの木が倒されていて明るくなっている。台風で倒れたのだろうか。
朝の気温は低いがこれから徐々に上がってきそうだ。風が吹くと周りの木々が音をならす。それと同
時に黄色い煙が舞い立つ。杉花粉だ。今日は今シーズン最高の飛散になるとラジオで報じていたっ
け。こんなときに山へ入っていくのは花粉症でなくても嫌なものである。思わずハンカチで鼻を押さえ
てしまった。
御旅所のすぐそばに道があり、猪柵の戸が見えたので、そこを開けて入っていく。小さな谷を詰めて
306pの西の鞍部に出るつもりだったが、谷を間違え、急登を喘ぎながら登りきったところは306pだ
った。
「ありゃりゃ、こりゃさい先、悪いね。まあ、なんとかなるわ。」
いつも「なんとかなる。」のたぬき二人である。
シカよけネットを左に見ながら登っていくと、長都羅志(ながずらし)山頂。三等三角点(点名空林
444.3m)が木々に囲まれて静かに座っている。
ここが竜ヶ岳への長い尾根の出発点である。
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北山三角点 |
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植林の急な尾根を登る |
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赤いプラ杭が三原と三方の村境を示すように立っている。松葉が落ちた気持ちのよい道を20分
ほど歩くと、北山(四等三角点 点名坂の谷 419.4m)に着く。ここも木々に囲まれ展望はない。
北山から426pまでは、420m前後の比較的なだらかな尾根で、歩きやすい。
北に鳴尾山、南に東峰山や篠ヶ峰を見ながら、これから始まる急登にそなえる。
426pからは氷上町・加美町界尾根への急な登りを登る。植林や大きな岩のある尾根。下から
見てもずいぶん急に見えたが、登ってみると思ったほどでもない。父たぬきに「標高は?」と何度も
尋ねる。時計の高度計と地形図の高度を比べながら登っていくと、いつの間にか町界尾根に着く。
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竜ヶ岳山頂 |
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千ヶ峰が近い |
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標高約810m、出たところに丸太のベンチがあり、加美町方面の展望所となっている。千ヶ峰
や笠形山が杉原谷を隔てて大きい。千ヶ峰の北斜面にはまだ少し雪が残っている。
5分で竜ヶ岳(三等三角点 点名竜ヶ岳 816.7m)山頂。兵庫ふるさと50山に選ばれ、また
辰年には干支の山ということで訪れる人も多い。我々はずいぶん久しぶり。山頂の西側が以前
よりも刈り込まれ、展望がよくなっている。
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前日に歩いた氷ノ山三ノ丸が白い
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正面に千ヶ峰から三国岳にいたる山々、加美アルプスのかなたには、前日歩いた三ノ丸から氷ノ山
が白い帯のように見える。その左に鉢伏山。妙見、蘇武の山並み。残雪の山々が白く浮かんでいる。
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なだらかな段ヶ峰・フトウヶ峰 |
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ちょうどお昼時、氷ノ山を眺めながら三角点のそばで昼食にする。食べていると無線機から聞き慣れ
たMXFさんの声が・・。コールしてお話ししていると、千ヶ峰のKDTさんも交信の輪に入ってこられる。
そろそろ交信を終わろうかという頃、黒田庄の白山にこれから登るというOAPさんも出てこられる。
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竜ヶ岳から北の下りで
(白:歩いてきた長都羅志からの尾根) |
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交信を終え、後かたづけをしていよいよ鳴尾山に向かう。竜ヶ岳から北へ舟坂峠への縦走の始ま
りである。直下は急だが、すぐになだらかな尾根となる。赤プラ杭が播丹界を分ける。
植林が間伐された所からは展望が開け、歩いてきた尾根が眼下に長く延びている。その向こうに
は安全山、そしてバックは五台山を盟主に、中央分水界の山並み。
「それにしても長都羅志からは長い尾根やったね。」
678pまでは快適な道。大柿さんの赤布も現れる。678pからは尾根が二手に分かれているの
で要注意である。壊れかけた猪柵の針金にテープとPPロープがつけてあるので、その印のある針
金の方へ進む。もう少しで東へ下りる尾根に入る込むところだった。
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鳥羽坂 |
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やさしく迎えてくださる |
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678pから尾根は下りになる。地籍調査のための三角点があり北西の展望が開けている。
三国岳が大きく迫る。粟鹿峰のアンテナ群もはっきりと見える。
下った鞍部が鳥羽坂(とりまさか)。峠の真ん中に「坂道供養塔」と書かれた台座に座った
石仏が我々を迎えてくれる。文化七年と掘られている。昔は往来があったであろう峠も今は
訪れる人さえまれで、たまに我々のような登山者か山林で作業する人くらいであろう。
久しぶりの訪問者をなんとも言えない穏やかなお顔で迎えてくれたお地蔵様。思わず頭を
撫でていた。寂しい山道でこんな石仏に出会うと、我々と同じように旅人もほっとしたことだろ
う。
鳥羽坂から西に下りると加美町鳥羽、東へ下ると三方の南の谷へ至る。どちらにも峠道が
下りていたが、その先はどうなっているのか、いつか確かめたいものだ。
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鳴尾山の南から見る 三国岳 雲頂山 粟鹿峰 |
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鳥羽峠は、標高約650m、次の目標の鳴尾山は753.2m、およそ100mを登り返さね
ばならない。一気に登るわけではないが、鳥羽坂からはかなり急登である。まず、699pに
のぼり、こぶのような小さなピークを越えていく。鳴尾山手前で植林が切れ、三国岳、雲頂
山、粟鹿峰の三座の展望がすばらしい。少し傾きかけた日を受けて機嫌よさそうに並んで
いる。粟鹿峰にはまだ雪が残っているが、今日の暖かさでだいぶん融けただろう。
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ひっそりとした鳴尾山 |
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鳴尾山山頂は、木立に囲まれ、三角点があるだけの静かな山頂。ようやく鳴尾山まで
たどりついた。竜ヶ岳は訪れる人が多いが、ここまでやってくる人は年間何人ほどだろう。
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鳴尾山からの下りから北を望む |
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播丹界は鳴尾山から北西に向きを変える。氷上町側は桧の幼木で下刈りしたものがそのま
ま放置されて、少し歩きにくい。しかし、木が低い分、北に展望が広がる。カヤマチ・方須張山
とそれに連なる山々、岩屋山の紅白鉄塔。山は見る方向によって形が変わるが、カヤマチ・方
須張もこちら側から見ると、全くちがう山のようだ。
やがて、白黒の杭や成松財産管理組合と書かれた杭も現れる。
606pで小休止。尾根はここから北へ向かう。
次のピークはピークを巻いていく。少し歩いたところで後から来るはずの父たぬきがやってこ
ない。「おーい!」と呼ぶと、あらぬ方向から返事がある。北東に進まなければならないのに、
北西の尾根を歩き始めていたのだ。「こっち、こっち!」と呼び戻し事なきをえた。やれやれ。
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ようやく舟坂峠 右を下る |
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赤ちゃんを抱いた石仏 |
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尾根はしばらく藪っぽく、足に引っかかって靴ひもがほどけてくる。舟坂峠直前にも地籍調査の三
角点があり、H15/3と記してある。
舟坂峠への急な斜面を木に掴まりながら下ると、南向きにぽっかり開いた石室が目に飛び込む。
中には赤ちゃんを抱いた石仏。その優しい表情はここまでの疲れを忘れさせるくれる。
悲○英○ 三方村 三郎平衛 とある。作られた年代はわからない。赤ちゃんを抱いた石仏なん
て珍しいね。
舟坂峠は西の加美町山寄上と東の三方を繋いでいる。
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峠道は谷に下りると荒れている |
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満々と水をたたえた三方大池 |
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2体の石仏に出会った播丹界ともわかれをつげ、三方大池へと峠道を下る。使われなくなった峠の
道はだんだんわかりにくくなっているが、成松財産管理組合の杭がポイントに立ててあり、それが道
の印となる。台風で倒木や谷筋はガレているが、なんとか地図の堰堤に下りる。堰堤からは峠の道
から離れ、すぐそばの林道を歩き、三方大池まで歩く。池の水面に影を落とす山々。
中野に向かう道で逆光の中に竜ヶ岳が浮かび上がっている。今日もよく歩いたね。
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