野瀬峠から鹿倉山
京都府天田郡三和町(547.8m)

東田の谷の林道から鹿倉山を振り返る

 春のような穏やかな土曜日。早昼をすませ、春日町野瀬に向かう。野瀬は、春日町の中心部黒井から10km以上も離
れた集落だ。国道175号線から栗柄峠をめざし、栢野を過ぎると、栗柄峠に向かわず、左に折れて野瀬集落に入る。氷
上郡に生まれ育ちながら、野瀬に入るのは父たぬきも私も初めてだ。

 野瀬集落を過ぎ、地形図の赤土谷をめざす。林道を進むと、椎茸のほだ木が井形に組まれたところがある。車をここに
置き、野瀬峠に向けて歩き始める。林道は続いているが、使われていないので草に覆われてしまっている。所々、山が
崩れ、狭くなっているところもある。林道から山道に入る。暗い植林の中ではあるが、野瀬峠まではなんとか道が残って
いる。暖かい陽気に誘われ、ウグイスがさえずりの練習をしている。ああ、春やなあ。
赤土谷林道途中の椎茸のほだ木を積んだところ 野瀬峠
 25分で野瀬峠。松100の石標があるが、お地蔵さんはない。兵庫県・京都府の府県境なので、ここを北に下ると三
和町東田の谷の集落。峠から府県界を東に歩く。道はあるが、のびた枝が行く手を阻み、歩きにくいことこの上ない。4
06ピークを過ぎると、府県界は北に延びている。この辺りは広い尾根なので、方向をまちがわないように注意が必要だ。
木の間から右後方に大きな山が見える。「あの山、どこやろ?」と思いながらよく見ると三岳である。三岳がとても近くに
見えるのだ。
札差峠 鹿倉山主尾根のハイキング道
 藪っぽい府県界は道らしいものはあるが、道標もなく、もちろんテープもない。「やっぱり丹波の山はこうでなくっちゃ。
こういう道を歩きたかったんや。」
 峠から30分で札差峠だ。鹿倉山・野瀬峠間の最低鞍部で、東にたどれば篠山市桑原、西に行けば東田の谷に下りて
野瀬峠からの道に合流する。ここも何もない峠だ。

 峠からいよいよ鹿倉山への登りだ。境を示すプラ杭と踏み跡がまっすぐに上がって行っている。これをたどれば鹿倉山
だ。地形図を見ると、急登が予想される。案の定、かなりの急なのぼりだ。篠山側は雑木の自然林、三和町側は植林。
境界ははっきりしている。先を行く父たぬきを追いかけるが、なぜか私の足は重い。植林がとぎれて雑木ばかりになると、
傾斜もゆるんできて少し楽になってきた。しばらく歩くと、よく整備された本郷越えからのハイキングコースに合流した。花
芽をつけた馬酔木がたくさん伐採されている。春を待たずに、かわいそう。
明るい鹿倉山山頂 切り開かれているので展望がよい
 鹿倉山頂上は、木が切り開かれ、明るく展望がよい。西方面は木がじゃまして見えにくいが、ぐるっーと見渡すとほぼ
360度の展望と言ってもいいだろう。南には大たわを挟んで右に三嶽、左に小金が岳が壁のようにそびえている。霞ん
でいなければ遠くまで見えるのだろうが・・。父たぬきは、無線でteihaiML各局をコールするが、応答無し。記帳用のノ
ートがあったので書き込みをし、三和町の観光パンフレットを1部いただいて山頂を後にする。
 もと来た道を引き返す。ハイキング道から府県界へのとりつきに注意しないとそのまま下ってしまうおそれがある。来た
ときに目印になるものを置いておいたのでその心配はない。
ここから東田の谷へ出てきた 東田の谷の道標
 山頂から札差峠まで、落ち葉で滑らないよう慎重に下りていく。札差峠から西へ下る。谷なので道が荒れていないか心
配だったが、思ったほど歩きにくくなかった。およそ10分で東田の谷の林道に降り立つ。といっても舗装道路。すぐそばに
民家がある。下りたところに道標があったので撮していると、近くで山仕事をしていた男性が声をかけてこられた。道標に
は、右のせささ山 左かう谷春日 と書いてあるとのこと。もとはその場所でなく、移動されたようである。野瀬峠への道を
たずねると、踏み跡くらいはあるであろうとのこと。何とか歩けそうだ。
 
 林道をどんどん南に進んで野瀬峠をめざす。林道はそのうち地道になり、暗い谷に入っていった。間伐された木や倒木が
道をふいでいるので、短い足をいっぱいのばしてまたいだり、木の下をくぐったりして、やっとの思いで通り抜けていく。そう
こうしているうちに、もう少しで峠かというあたりで、とうとう道がなくなってしまう。「おかしいなあ、峠から見たとき道があっ
たのに。」「どうも少し西に向かっているようやなあ。」父たぬきが磁石で確認している。
 とにかく登るだけ登り、尾根にとりつく。野瀬峠よりもだいぶん西のようだ。この尾根道は歩きやすい。松97の石標が立
っている。しばらく歩くと、野瀬峠にたどりついた。
 帰ってから、もう一度地形図をよく見ると、東田の谷から野瀬峠への道は途中から尾根に上がっている。それを何も考え
ず谷の道を歩いてしまったために歩きにくい道を歩く羽目になってしまったのだ。「この道を行けば野瀬峠。」と油断して地
形図で確認せずに歩いたためだ。「画竜点睛を欠く」とはまさにこのことである。

 車に戻るとちょうど16時。帰りに集落の奥にあったお地蔵さんを見に行く。摩耗してよくわからないお地蔵さんと「庚申」と
彫られた舟形の石標が並んでいた。
 お地蔵さんに見送られ、静かに暮れようとする野瀬の村を後にした。
行った日 02 2/23
行った人 たぬき二人
山行タイム 赤土谷林道12:35〜野瀬峠13:00〜406p13:10〜札差峠13:30〜山頂14:00ー14:15
〜札差峠14:40〜東田の谷230m地点14:50〜野瀬峠15:40〜赤土谷林道16:00
2.5万図 市島 宮田