やまごさんから、丹後の高山のブナがいいよ、と以前から聞き、「ほな行きましょ。」と相成った。
父たぬきは、村の用事が入り、私だけで集合場所の大宮町の小町公園へ向かう。
176号線を北へ。道路沿いには台風23号の爪痕があちこちに残っている。
五十河(いかが)の公園に着くと、やまごさんは到着し、準備を始めている。地形図でコースを
確認し、さあ出発!
向かう方に、内山山系が明るく輝く。植林が少なく雑木の山々が清々しい。「ええとこやねえ。」
すぐ近くの薬師堂では、数人の男性が台風の後始末をされている。中を覗くと、小さな石仏が祀ら
れている。村の中には、青面金剛の石碑と石仏。静かな山里である。
50ccの原付バイクに乗ったおばあさんが我々を追い抜いていく。耕耘機でテーラーを引いてい
るおばあちゃんも。お年寄りが元気な村だ。 |
|
|
|
|
内山山系 |
|
青面金剛と石仏 |
|
道路沿いの斜面に穴があり、扉がきっちりと閉められている。先日柏原で見たものと同じだ。さ
つまいもなどを貯蔵する室で、扉が修理され現役で使われているようだ。
集落の最奥のお宅は茅葺き。倉庫の方は台風で屋根が飛ばされている。軒下にクマザサが丸
く積んである。よく見ると、屋根は笹で葺いてある。茅葺き、藁葺きは珍しくないが、笹葺きは初め
てだ。
犬が苦手なやまごさんは放し飼いのワンちゃんにおっかなびっくり。(^o^)
|
|
|
|
|
天文台 |
|
分岐 |
|
集落がとぎれ、たんぼ道を歩いていくと天文ドームが見える。実際に観測が行われているのか
どうかわからないが、こんなところなら星もきれいに見えるだろうね。
さらに歩いていくと、たんぼ道から林道になり、堰堤を過ぎてしばらく歩くと、倒木で道がふさが
り車では通行不可能な状態になっている。道の土が流され、深く掘れている。通行できるように
なるまでにはまだまだかかりそうだ。
しばらく行くと林道は二股に分かれ、道標は右ブナハウス、左味土野とある。ここは左の道をと
り、高尾山をめざす。
広い林道は崩れ、車は通行できない。しかし、これまでも車はあまり通行していなかったような
感じだ。徐々に道は細くなり、落ち葉がいっぱいでいい雰囲気。
|
|
|
|
|
背丈ほどの笹をかき分けて・・・ |
|
高尾山頂から金剛童子山(左)と依遅ヶ尾山(右奧) |
|
分岐から25分ほど歩くと、峠の最高点で高尾山へのとりつきである。行かない方がいい、と
標識の空いたところに書き加えてある。しかし、笹の中に踏み跡があるので、踏み跡をたどっ
ていく。ところどころにある黄色のテープも目印になる。背丈ほどの笹をかき分け歩くと、足下
に黒い糞が点在している。少し前のもののようだが、間違いなく熊の糞だ。すでに冬眠に入っ
ている頃なので遭遇する心配はまずないだろうが、少し前なら出会っていたかもしれない。
熊の糞とは反対に白いトイレットペーパーもあちこちに落ちている。紙の状態からあまり日数
が経っていない。引き返したときのために置いていったようだが、あまりきれいなものではない。
尾根が東へ向きを変えるところはちょっとした峠のようなところだが、その北側は植林で、杉
のほとんどが倒れている。倒木を跨ぎ、Ca600m辺りまでくると、今度は藪、やぶ。倒木と藪
をなんとかクリアしてようやく山頂にたどりつく。笹の中に三角点を捜しながら歩いていると、前
を行くやまごさんが「あったでー。」と叫ぶ。
|
|
|
|
|
笹の山頂 |
|
高山は遠い |
|
少し切り開かれてはいるが、笹の中に三角点(620.3m 点名高尾)が頭だけ出している。北に
金剛童子山と依遅ヶ尾山。東にはこれから向かう高山。「遠そうやね。」 天橋立も木の間からのぞ
める。
少し休んで来た道を引き返す。同じ道を歩いているはずだが往きよりもスムーズに下ることができ
た。
峠から東の尾根にとりついて高山へ向かう計画だったが、どうも藪っぽく時間がかかりそうなので
ブナハウス経由で高山へ登ることにする。
|
|
|
林道を標識のある分岐へ戻り、ブナハウスへ向かう。分岐の辺りは路面が土砂に覆われ、いちば
んひどい状態になっている。
そこを越えれば竹藪や石組が現れ、ブナハウスが近いことをうかがわせる。カーブを曲がるとまっす
ぐな道に倒木が2本。その向こうにブナハウス内山が見える。
開いていたので中に入り、ノートに記帳する。11時50分。お昼時だが、やまごさんが「高山で食べ
ましょう。」ということで、駒倉峠へ向かう。ブナハウス周辺は内山廃村跡で、昭和48年に最後のお家
が離村したという碑が立っている。
緩やかな道をしばらく歩くと駒倉峠。高山へは急な階段を登っていく。反対側には高尾山への案内
標識がある。時間があればここから出てきていたかもしれない。峠を北に行けば、駒倉廃村もあるとい
う。こちらもいつか歩いてみたいところだ。
丸太の階段を登っていくと、鉄の鎖やトラロープが施されている。細い尾根の南側が崩れ、ブナが根
こそぎ倒れている。台風の風と雨の強さを伺わせる。オオイワカガミの葉が赤くなっている。春にはき
れいな花を咲かせるにちがいない。
|
|
|
|
|
倒木ブナの向こうに高尾山 |
|
高山山頂 |
|
風当たりの強いところはブナが北から南へ倒れている。
「ブナが倒れるなんて・・・。」
ブナもこんな台風に出会ったのは初めてではないだろうか。人一人が通れるようにナタ目が入ってい
る。振り返ると倒れたブナの向こうに高尾山が横たわっている。
尾根の真ん中に何か落ちている。帽子だ。濡れた形跡がないので今日落とされたものにちがいな
い。同じところにクラッカーの空き袋も・・・。同じ人が落としたのだろうか。そういえば林道にクラッカー
が落ちていたが、同じ人のものかもしれない。帽子を拾い、 東谷への分岐を過ぎると、高山まで50
mの標識。尾根からはずれて少し歩くと高山山頂。
702mと丹後半島では最高峰だというが、地形図に標高は記載されているものの山名表示はない。
頂上には単独行の男性が二人。帽子はそのうちの一人のものだった。
山頂からは、北に太鼓山とその左に風力発電の白いプロペラが確認できる。双眼鏡で見るとくるくる
と回っている。
ベンチに座ってお昼にする。東にはこのあと向かう柳平への尾根が延びている。高山から北への尾
根にも道があり上世屋へ下りられるそうだ。
|
|
|
|
|
太鼓山と風力発電 |
|
倒れたあがりこにがっくり |
|
コーヒーを飲み、早々に柳平をめざす。尾根に戻り東へ歩く。よく整備されたブナの尾根。しかし
道沿いの大きなブナが倒れている。京都府指定のあがりこだ。やまごさんが夏に来たときには元
気だったのに、無惨な姿をさらしている。近くの同じようなブナもほとんどが根こそぎ倒れたり傾い
たりして痛々しい。
|
|
|
|
|
ブナの悲鳴が聞こえてきそう |
|
倒木がなければこんないい道 |
さらに歩いていくと、根元の方で幹が折れて90度曲がったブナ。ちょうど登山道の上に倒れてい
るので笹藪を迂回していく。風が通り抜けるところのブナは壊滅状態。
|
|
|
|
|
芽吹くことのない芽 |
|
柳平へのブナ林 |
|
倒れた太いブナを跨いでいく。来春のための冬芽は冬を待たずして枯れていこうとしている。ブ
ナたちのうめき声が聞こえてきそうだ。
高山から20分ほど歩くと柳平への分岐。標識に従って北へ進む。倒れているブナはほとんど
なく、西の谷にブナの森が広がる。右手には少し霞んだ宮津湾。笹の道だが、高尾山ほどでなく
歩きやすい。ここにもトイレットペーパーが残っている。
太いブナ、若いブナなど、たくさんのブナの木がまっすぐに伸びている。山系のブナはまだまだ
大丈夫だなと一安心。
|
|
|
|
|
木の実の調査 |
|
柳平山頂 |
|
柳平の山頂手前にロートのようなものが立っている。地面にはすり鉢のような網。やまごさんによ
ると、木の実調査と雨量の測定をしているらしい。そばにバッテリーもある。観測データを送ってい
るのだろうか。
柳平三角点(三等三角点 679.1m)は、笹が丸く切り開かれた真ん中に頭を少しだけ出して
埋まっている。展望はないがブナに囲まれた静かな山頂。北に続く尾根にも踏み跡があり、テー
プも巻いてあるのでそちらへも歩けるようだ。我々は、来た道を高山へ向けて戻る。
|
|
|
|
|
これもあがりこ |
|
「今日は体調ええでぇ」 |
|
高山への分岐の少し東で三人連れに出会う。一人の男性は、長靴を履き、腰に鋸をぶら下げ
ている。同行の女性によると、「ここの主のような人」だそうだ。「国を動かしてここの保護ができ
るようになった。」とおっしゃっる。これから大谷?のブナを見に行かれるそうだ。登山道の整備
などはこの方がしてくださってるようだ。
三人と分かれ、高山分岐から少し歩いて東谷の尾根を下る。はじめは急な階段が続くが、し
ばらく歩くと傾斜もゆるみ気持ちのよい道となる。
|
|
|
|
|
木の間から天橋立 |
|
すみれ |
|
左手には、阿蘇海と宮津湾を分ける天橋立が霞んでいる。足下に目をやると、紫のすみれ。春
にはちょっと早いけどなぁ。
道は、南谷、奥野谷の分岐から右に折れ、山腹を巻くように東谷へ向かう。東谷一帯は内山山
系でいちばんのブナ林という。私的には、柳平もよかったと思うが・・・。
|
|
|
|
|
東谷ブナ林 |
|
内山廃村 |
|
|
倒木を一本乗り越えて下っていくと、田んぼの跡に出る。細い道を道なりに歩いていくと、内山
廃村跡の石碑のところだった。ブナハウスには寄らず林道をひたすら下りていく。
天文台を過ぎた辺り、畦で男性がひと休み中。内山から最後に下りたお家のことを尋ねると、五
十河に越されたとのこと。何より、その男性の家の跡に、あのブナハウスが建っているというのだ。
「えー、ほんまですかぁ・・・。」
今、77歳。7歳のとき、小学校入学の際に通学のことを案じたお父さんが五十河のいちばん奧に
あった自分の家の田に家を建てて移り住んだという。その頃、内山には16軒のお家があったとい
う。昔話を伺っていると、70年という時の移り変わりはあっという間のような気もする。
|
|
|
|
|
しずかな五十河の里 |
|
小野小町のお墓 |
|
村の中を歩いていると、子どもが人なつこい笑顔で挨拶してくれる。のどかな里も夕暮れ近い。
小野小町の墓所にお参りし、帰り支度をするやまごさんより一足先に小町公園をあとにする。
高山をはじめとして、丹後の山は自然林が多くいいですね。やまごさん、ありがとうございまし
た。また丹後の山へ行きましょう!
|
|
|