中央分水界 とんがりさんから口銀谷を歩く
兵庫県 生野町



昼食ポイントからとんがり山(左ピーク)を望む
 丹波の中央分水界を歩いているが、今回は、やまあそさんとともに朝来郡生野町朝来町境のと
んがりさんから国道312号線までを歩くことになった。島田さんは生野の山についても、非常に詳
しいので大船に乗った気分だ。
 口銀谷で集合し、下山地の西山集落に向かう。西山は生野北峠のすぐ北にあり312号線の西
側の小さな集落だ。島田さんによると、ここは生野ダムの建設に伴いダム湖にしずんだ上生野の
人たちが移り住んだところらしい。下山ポイントにある法道寺はその際に移転したお寺だという。

 島田さんの車で栃原川に沿って遡っていく。菖蒲谷を抜け、林道を進む。大阪ナンバーの車が停
めてある。この辺に車を置くのかなと思っていると、大きな石がゴロゴロしたガレた道をずんずん進
んでいく。
 段ヶ峰への登山口の少し広いところに車を置き、身支度をして林道を歩いていく。まだ黒い雲が
空を覆っているがそのうち回復するだろう。空気が澄んで、少し肌寒い。
 
林道の右下にある滝とお不動さん 何回か沢を渡る

 林道を少し歩くと、島田さんが川の方を覗き込んでいる。「どこを下りようかなぁ。」 その辺りに滝が
あるらしい。林道から下りると、水量の多い滝のそばの岩窟に石仏が・・・。「これが例の石仏かぁ。」
水量が多いので近づけないのが残念。それにしても林道からは到底見つけることができない石仏を
見つけたなんてさすが島田さん。
 林道から沢に沿った道を歩く。本に掲載され以前より踏み跡が濃くなっているそうだ。沢を何度か渡
り返しながら緩い登りを歩く。前日の雨で増水しているが、渡るには問題ない。緩やかな流れなので
初心者向け沢歩きにはもってこいのところだ。
どんないいものが写せるのかな?
 
 「屋敷公団造林地」という看板があり、一帯は大規模な植林がなされている。そのときの作業小屋
の跡が残る平坦な所に出る。正面には青空の下に峠がくっきりと見える。
「ええ天気やねえ。」
下向きに咲いたエゴノキの花の撮影に四苦八苦の島田さん。今日は風が強くて写しにくそうだ。鹿除
けネットをくぐって行くと間違いなので要注意、と島田さん。ここで間違う人があるそうだ。

 しばらく歩くと、テープは右の尾根へ案内している。このコースはガイドブックのコースでやまあそル
ートはこのまま谷を遡る。ハイキングルートと別れると途端に踏み跡がうすくなる。しかし、道がなくな
るということはない。


 
とんがり山西斜面から西の展望

 歩き始めて1時間ほどで田路越えの峠に着く。ここからが中央分水嶺。少し登ると西の展望が開け
氷ノ山のなだらかな稜線とその左にこんもりした藤無山が意外な近さで目に入る。クリアな天候で山
々が近くに見える。
とんがりさん頂上から南の展望

 尾根コースと合流すると、頂上はすぐ。頂上(981.4m 点名辻ヶ淵 三等三角点)ではご夫婦連
れが早いお昼の最中。静かな山頂も我々の到着で途端ににぎやかになる。南方面の展望抜群。こ
れから歩く分水界尾根も一望できる。正面に笹原が見えるので、ここでお昼にすることに決定。千ヶ
峰を中心に生野や丹波の山を同定する。目をこらすと京都の愛宕山も見える。
 右にはフトウガ峰から達磨ヶ峰のたおやかな稜線、いくら見ていても見飽きない。これで北の展望が
よければ360度の大展望だが、贅沢は言うまい。こんないいお天気に巡り会えたのだから。島田さん
は3度目のとんがりさんだが、これまであまり展望には恵まれなかったようだが、今日は最高だと喜
んでいる。
左後方にフトウガ峰 昼食ポイントに到着

 今日は先が長いので、ご夫婦にあいさつして出発する。いよいよ分水嶺を法道寺めざして尾根を
北東に下っていく。しばらくはテープのハイキングルートを歩くが、いつの間にか分岐を過ぎ、テープ
もなくなる。歩けるかと案じたが、概ねスムーズに歩ける。大きな岩が点在し、板状摂理のおもしろ
い形のものがあると、島田さんがパフォーマンスをする。
 植林を抜け、灌木帯になったところで、フトウガ峰から達磨ヶ峰のなだらかな稜線が一望できる。
島田さんが秋に歩いたという伐採地のソマ道も見える。

 陽ざしは強いものの、風があるのであまり汗はかかない。とんがりさんから1時間で昼食ポイント
にたどりつく。

 大展望に思わず歓声が上がる。展望を楽しむのは後のお楽しみとし、まずは腹ごしらえ。それで
も食べながら、双眼鏡で覗いてみる。とんがりさん頂上に人影が見える。赤い手ぬぐいを振ってみ
たが気づいてくださったかな?
昼食ポイントから北東の展望

 正面にはとんがりさんが大きい。少し位置を変えると氷ノ山。妙見山から三川山の但馬中央山脈
もくっきり。さらに北に歩くと、円山川の流れに沿った町並みが見える。その先に床尾山、粟鹿峰も
大きく見える。海までも日本海までも見えるほど空気が澄んでいる。島田さんに山名を尋ねながらし
ばらく眺望を楽しむ。風が冷たく、手袋を脱いでいると手がかじかむほどだ。
 体が冷えてきたのでそろそろ出発しよう。
 分水界に戻り、なだらかな尾根をしばらく歩くと、892mピークとの分岐。地図で確認しながら尾根
をはずさないようにする。分岐は展望がよく、これから歩く分水尾根も一望の下。
「まだまだ先は長いなあ・・・。」
 少し下ったところで島田さんのスパッツのゴムが下草に引っかかる。それを取っていると、後方で
ガサガサという音。1mほどの茂みから子鹿が走り去っていく。
「昼寝してたのかな?」
気持ちよく熟睡しているところを闖入者に起こされ、慌てて逃げていったようだ。熊でなくてよかった。
 
茨をかき分けて・・・ 円山〜菖蒲沢の峠で探索する

 灌木の尾根を快調に歩いていく。少し登り返し、木のない平らな所に出る。ここから茨と鹿除けネッ
ト攻撃をうけ、藪好きな二人でもちょっと歩きにくい。何とか脱出して、藪でロスした分を取り返すよう
にさっさと歩く。
 地図の606m地点はいつの間にか過ぎ、ピークを越えたところに小さな峠がある。島田さんによる
と、菖蒲沢の人たちは、昔、円山から移り住んだそうだ。北西に円山に下る道が谷におりている。峠
から南方向にもよい道があるが、これは北東の尾根へと続いているので、そのまま歩くととんでもな
いところに下りてしまうので要注意。この峠で、島田さんにヒル除けスプレーをかけてもらう。ここまで
はヒルの気配がなかったが、ここから先はわからないとのこと。それでも「一応調べておいた方がえ
えで。」ということで、スパッツを取ってヒルの攻撃に遭ってないか確かめる。
 分水嶺は南へ続き、小さなピークを2,3、上り下りして、植林に囲まれた点名丸山(649.1m三
等三角点)に着く。ここまでくれば最終目的地まであと少し。ここまではなんなくこれたが、これから
先がうまく下りられるか心配だと島田さん。私は例によって「何とかなるわ。」とお気楽たぬき。
高星山(左に突き出た天狗岩) 鉄塔から植林を下る

 三角点から少し下ると巡視路に合流する。私は552mピークへ歩くと思っていたので、南の鉄塔
20へ。鉄塔の下で展望をおやつに休憩。しかし、ここに下りたのは間違い。三角点の東にある21
鉄塔方向が分水尾根なのだ。巡視路を引き返して21鉄塔にでる。ここから分水界尾根を見つける
のが至難の業。鉄塔から暗くて急な植林の中に突っ込んでいく。方向が少しでも違うと思った方へ
下りられない。たくさんの間伐材で歩きにくいが、こういう所はお手の物。下には少し平坦なところが
見える。急いで下りると、そこには地図にもない広い林道があらわれる。一段下に池のようなところ
があるので、林道を少し歩いて池の方へ行ってみる。浅い池で水の多い湿地といった方がいいよう
だが、周りの木には、モリアオガエルの卵がたくさんぶら下がっている。水の中を覗くとおたまじゃく
しが泳いでいる。 
池の周りにはモリアオガエルの卵がいっぱい 「本当はあのお寺に下りてくるはずやったんやけど・・・」

 さて、ここから下る尾根は?地形図とにらめっこしてたぶんここだろうとめぼしをつけた方向に歩
く。徐々に尾根は狭くなる。地形図では細い尾根なのでここに間違いない。と油断したのがいけな
かった東へ歩かなければならないのに、少し北寄りに歩いている。右を見ると本来歩くべき尾根が
・・・。
「どこでまちがったのかなぁ?」「ちょっとわからなかったね。」
たぬき一人ならこういう過ちはよくあるが、地図読み名人の島田さんでさえ間違うほど下りの尾根
は難しい。「画竜点睛を欠く、高名の木登り。」といいながら、戻らずにそのまま尾根を下ると人家
の屋根が見え、ほどなく猪垣にぶつかる。下りたったところは西山の奧の観音堂?のそば。
「ほんとうはあそこを下りてくるはずやったんやけど・・・。」
法道寺に続く尾根を見て残念そうな島田さん。最後の最後で分水嶺をはずれてしまったことが悔し
いようだ。私はとんがりさんからの長い尾根を歩けて十分満足。

 集落の入り口にある駐車場においた車に戻る。幸いヒルの攻撃に遭っている様子もなかった。
 私の車で菖蒲沢に向かう。川底のような悪路も何とかクリアし、島田車までたどりつく。それぞれ
の車で静かな菖蒲沢をあとにし、312号線で南北に分かれて帰路についた。

 地図読みの難しさを思い知りましたが、ハイキング道でないところを歩くのはやっぱりおもしろい
ですね。
 島田さんには今回もいろいろ教えられることがありました。おおきにです。

 地図はこちらをどうぞ。

 
 
 
行った日 04 6/13(日)
行った人 島田さん たぬき
山行タイム 林道P9:13〜9:20ー9:22〜作業小屋跡9:45ー9:50〜
田路越え鞍部10:18〜とんがりさん10:33−10:50〜
昼食11:50ー12:30〜丸山三角点14:17〜鉄塔2014:15
ー14:40〜鉄塔2114:45〜池15:05〜観音堂15:30〜
車15:40
2.5万図 神子畑 但馬新井