梅雨の弥十郎ヶ嶽を行く


行った日  :  1999年6月26日(土)     天 候 : 曇り  蒸し暑い 
行った人  :  丹波のたぬき夫婦         コース : 薬師が原コース
参考地図 :   北摂の山々(昭文社)
                         

 
                                      
                                                薬師が原コース登山口
                                        
 
  R372を東進。日置バイパスを過ぎ、西光寺、薬師が原キャンプ場の道標を右折する。
畑市集落から少し入ると、薬師が原キャンプ場である。
先日来の雨で、猪垣のゲートも水が流れて川状態になっている。これからの山行に不安がよぎる。
 
 キャンプ場に車を止め、身支度を始める。「ガサガサガサ。」鳥ではない。 「何かいる!」
2ヶ月ほど前から、篠山市では熊が出没というニュースが報じられていた。
「まさか」 (すーっと、血が引いていく)
気を取り直し、登り始める。路傍の木いちごが「こんにちは」と挨拶をしてくれる。
一つつまんでみる。少しすっぱい。
 熊よけに歌でも歌おうと思ったが、前の晩、のどを酷使したため、声が出ない。
 
 よく整備された植林の中の道が続く。でも、いたるところで小川が発生している。
 
 およそ15分で、吹越峠に到着する。ここは曽地からの道が合流している。
しばらく赤松の混じった自然林の尾根道をたどり、やがて尾根を巻くように谷筋へと向かう。
次第に沢の音が大きくなってくる。
 
 がれた谷に出たとき、前をゆく夫がしきりに足下を見ている。そして、突然「ウワーッ。」という叫び声。
一瞬、「ついに、熊が出たか!」と思う。 (私)「なにー!」 (夫)「子どもの鹿や!」 鹿と聞いても安心はできない。
 そうだ、登山口で聞いた、あの「ガサガサ」は、この鹿だったんだ。
子鹿もこんなところで、たぬきの夫婦に出会って、さぞ驚いたことだろう。
しばらくお互いに見つめ合い、子鹿は山の奥に消えていった。なかなか動悸がおさまらない。
 
                       
                      中央の暗いところに、かすかに鹿が見えるでしょうか?
 
 鹿と別れるとすぐ、ロープが張ってあるところに出る。足が短い私は、慎重にロープをつたって登る。
先ほどのドキドキとはちがったドキドキである。
 谷筋の小さな流れを何度か渡り返す。水量が多く、水の中を歩く感じである。
水量が豊富で、山道の下を滝がゴーゴーと音をたてて落ちていく。梅雨の山もいいものである。
 
 20分くらい行くと、3〜4mの滝があり、ロープが張ってある。
「えーっ!こんなとこのぼるのー。」 ここをクリアーする事ができるのだろうか。
夫に続いて、注意深く岩を登る。普段なら、こんなに水が多くなく、滝にはなっていないだろう。
「はあー、こわかった。」 人一倍恐がりの私である。
 安心したのもつかの間、またまた同じ様な滝があった。ここにもロープ。
ドキドキしながら、必死でロープをつかむ。3点確保などとつぶやきながら。なんとかクリアー。
 
                       
                       ロープのはってある沢
 
 谷筋を上り詰めたところに、巨大な洞窟があった。「山窟弥十郎洞穴」の札。中に入って見る勇気はない。
それにこの辺りは湿度が高い。苔むしシダが茂って、ジャングルにいるようだ。
 
                       
                          洞 穴
 
 それにしても、静かである。聞こえるのは、沢音と鳥の声、そして、ときどき木々のささやき。
 
 沢を登りつめ、少し行くと、尾根道に出た。道ははっきりしているが、草や木が生い茂って歩きにくい。
先を行く夫が露払いをしてくれる。しばらく登ると明るい山頂に出た。北西方面(篠山市街)が切り開かれ、
八上城のある高城山が眼下に見える。展望はもうひとつで、多紀アルプスの山々がかすかに見えるぐらいである。
 
お昼には少しはやいので、無線機を取り出しCQを出す。2週間前に開局したばかりの新米局長である。 
CQを出すのはこれが初めてだが、思ったよりスムーズに言える。2局応えていただいた。
 
 
                        
                    弥十郎ヶ嶽山頂             
 
 
  お昼ご飯を食べて休んでいると、年輩のご婦人がお二人、反対側から登ってこられた。
お弁当を食べ始められたが、大きな音でラジオをつけておられる。天候も危ういので、早々に撤収することにする。
 
 同じ道を下る。道が濡れているので、落ちている小枝でよく滑る。ロープのかかった沢まできた。
巻き道を行くことにする。踏み跡らしきものをたどるが、すぐにわからなくなる。なんとか沢まで下る。
下りたところは1番目の滝のすぐ下だった。 
「ホッ!。」と一安心。
 
 あとは滑らないように注意して下りるだけ。ギンリョウソウがひっそりと咲いている。 
出会ったのは、山頂でのお二人だけ。そして、鹿。こんな時期に丹波の低山に行く人はあまりないようである。
 
 明るい林道に出ると、朝と同じように木いちごがむかえてくれた。
 
◇ご注意◇
 藪山に入るときは、長袖で行きましょう。次の日、夫の体にはたくさんの発疹が出ていました。 
下りるとき半袖だったので、なにかにかぶれたものと思われます。いらぬおみやげをもらったものです。